第5回:住宅・老後×市場原理 ― 人生の大きな買い物に潜む競争

家計×投資

FP3級で学ぶ「人生の三大資金」は、住宅・教育・老後
どれも人生を左右する大きなテーマですが、30代後半の私たちにとって、特に気になるのは「住宅」と「老後」ではないでしょうか。

住宅ローンを組むべきか、都市の高騰か地方の空き家か。
そして将来の医療や介護にいくら必要なのか。
これらは数字だけの話ではなく、市場原理が家庭の暮らしにどう影響するかという問いでもあります。

ここで大切なのは「正解を証明すること」ではありません。
自分の家族にとって、どのポイントが“自分ごと”になるのかを考えることなのです。

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戦前の都市部では「家は借りるもの」が一般的でした。
戦後の高度経済成長と土地神話が「家を持つのが正しい」という価値観を広めたにすぎません。

そして現在――。

  • 都市部:2023年、東京23区の新築マンション平均価格は1億1483万円。2024年度も1.11〜1.16億円で高止まり。
  • 地方:総務省の統計では、2023年の空き家率は13.8%、約900万戸で過去最高。

「持つべきか/借りるべきか」は、もはや信仰の問題ではなく、生活設計の一部としてどう捉えるかに変わっています。

👉 自分ごとのポイント:
**「住宅は資産なのか消費なのか、自分にとってどちらの意味が大きいのか」**を家族で話し合うこと。


住む場所の二極化 ― 便利さか、余白か

都市で便利さを買うのか、地方で余白を買うのか。
これは単なる価格比較ではなく、家族の時間の過ごし方に直結します。

  • 都市:教育・医療・仕事環境は整うが、価格は高止まり。
  • 地方:価格は安く広さも確保できるが、人口減少によるリスクあり。

👉 自分ごとのポイント:
**「自分の家族にとって、時間と暮らしやすさは価格差を正当化できるか」**を基準に選ぶ。


老後費用 ― 見えないコストをどう織り込むか

医療や介護の支出は、将来の大きなリスク要因です。

  • 生命保険文化センター(2024年)によると、介護費用は月平均9.0万円
     (在宅なら5.3万円、施設なら13.8万円
  • 平均介護期間は約4年7カ月

単純計算でも数百万円規模の支出。誰にでも起こりうる可能性があるからこそ、無視はできません。

👉 自分ごとのポイント:
**「老後の不安を、いまの家計にどこまで織り込むか」**を夫婦で話すこと。平均値を鵜呑みにするより、「うちのケースでは?」と考えることが大切です。


自分ごと化のための3つの視点

  1. 住宅は安心かリスクか
     資産価値だけでなく「暮らしやすさ」の視点で判断する。
  2. 立地は価格より家族時間
     通勤・教育・余白――どの時間を優先するかを基準にする。
  3. 老後は額よりシナリオ
     「月9万円×4年7カ月」を目安に、自分の家計で耐えられるかを検討する。

結論 ― 揺らぎは当たり前、だからこそ「自分ごと」に

住宅も老後も、統計を見れば揺らぎだらけです。
でもその揺らぎは、市場原理における自然な変動にすぎません。

重要なのは、「揺れる数字」そのものではなく、
**「どの揺らぎが自分の家族にとってもっとも影響を持つか」**を見極めることです。

結局のところ、住宅も老後も「誰と、どう生きたいか」という問いに帰着します。
30代後半の今だからこそ、その問いを家族と共有することが、私たちの最大の市場戦略なのです。

シリーズ目次

第1回:ポケカ騒動にみる「誰でも市場に参入できる時代」の光と影

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第2回:教育費×市場原理 ― 子どもの学びは「投資商品」になった?

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第3回:副業×市場原理 ― 誰もが「労働市場のプレイヤー」になる時代

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第4回:時間×市場原理 ― 「家族時間」すら奪い合う競争社会

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第5回:住宅・老後×市場原理 ― 人生の大きな買い物に潜む競争

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第6回:結論編 ― 市場社会を生き抜く家庭戦略

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