僕らが毎日使っているこの「お金」は、一体どこまで信じられるのだろう?
印刷もせず、電子の数字として流れていくマネー。
その“信用”の重さを、もし**金(ゴールド)**という確かな物質で測ったら……
どんな数字が見えてくるのでしょうか。
今夜はそんな、少し非現実的で、でもどこか現実を映す思考実験の話をしましょう。
【信用でできた世界と、静かに輝く金】
いま、世界は過剰な信用の上に成り立っています。
アメリカの債務残高は38兆ドルを超え、世界全体の債務は300兆ドルをゆうに上回ります。
それでも市場は動き続け、通貨は刷られ、株価は上がる。
でもこの膨張した世界を支える「信頼」が、ある日ふっと揺らいだらどうなるでしょう。
そんな中で、ひときわ静かに存在感を増しているのが「金(ゴールド)」です。
中央銀行は買い増しを続け、ロシアや中国はドルから金へ。
金はもう“時代遅れの遺物”ではなくなりました。
それは、信用という空気のようなものに、重さを与える最後の物質だからです。
【数字で見た「もしもの世界」】
ここからは少し数字の話を。
世界に存在する金の総量は約20万トン、
トロイオンスに直すとおよそ6億4,000万オンス。
一方、世界のマネー量(広義M2)は約100兆ドル。
もしこの全てを金で裏付けるとしたら── 理論価格=100兆6.43億≒155,000ドル/oz理論価格 = \frac{100兆}{6.43億} ≒ 155,000ドル/oz理論価格=6.43億100兆≒155,000ドル/oz
つまり、1オンスの金(約31g)が155,000ドル=2,400万円になる。
もちろん、これは極端な仮定です。
でも比率を下げてみても、結果は驚くほど高い。
| 裏付け比率 | 理論価格(USD/oz) | 日本円換算(1ドル=150円) |
|---|---|---|
| 100%裏付け | 155,000 | 約2,300万円 |
| 50%裏付け | 77,000 | 約1,150万円 |
| 20%裏付け | 31,000 | 約460万円 |
| ドル圏20% | 7,800 | 約117万円 |
現在の金価格はおよそ4,000ドル/oz(約60万円)。
この数字を見れば、「通貨の希薄化」がどれほど進んでいるかが見えてきます。
【なぜ現実はこの数字にならないのか】
人はしばしば「金本位制の復活」を夢見ます。
けれど、それはもう“人類が過去に置いてきた秩序”でもあります。
現代のマネーは、信用によって無限に増える仕組み。
銀行が融資をするたび、数字上の通貨が生まれる。
つまり、金の量がいくらあっても、通貨の総量を制御することはできません。
金を裏付けにすれば、金融政策の自由を失う。
そして、経済は息をするように伸び縮みできなくなる。
金は、信頼が失われた時に現れるが、
信頼があるうちは、静かに眠っている。
だからこそ、金の価値は“もしも”を映す鏡。
未来の恐れを数値化した、人類の心理指数なのです。
【静かな分散、ゆっくりした防御】
じゃあ僕らはどうすればいいのか。
答えは派手じゃありません。
少しずつ、静かに、金を「持つ」こと。
- 投資の10〜15%を金に分散する
- 毎月定額を積み立てる(ドルコスト平均)
- 物理的な保有とデジタル連動型(PAXGやXAUt)を組み合わせる
金は、上がる時に買うものではありません。
「信用が揺らいだ時」に、あなたを守る盾。
時間に強く、暴落に鈍い資産として、そっとポートフォリオに忍ばせておく。
それで十分なんです。
【金は“永遠の物語”ではなく、“永遠の警告”】
金は、通貨の信頼が崩れた時に姿を現す。
それは“価値の保存”ではなく、“信頼の回復”という行為。
永遠の価値はあっても、永遠の上昇はない。
それでも人は、夜の静けさの中で金を思う。
きっとそれは、
「お金とは何か」という、誰もが避けて通れない問いが、
静かに胸の奥で鳴っているからでしょう。

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