「普通借家契約の“普通”って何?──意外と知らない名前の由来」

FP3級

はじめまして、タイラー竹林と申します。
私は最近、**ファイナンシャル・プランナー3級(FP3級)**に合格しました。

正直に言うと、勉強を始めた頃は「専門用語が難しくて全然頭に入らない」「テキストを読んでも実生活にどう役立つのかイメージできない」と何度も壁にぶつかりました。きっと、同じように感じている方も多いのではないでしょうか。

そんな私でも、工夫を重ねるうちに少しずつ理解が深まり、「知識が生活に直結する実感」を得られるようになりました。だからこそ、この記事では――
私自身がつまずいたポイントや悩んだ用語を、かみ砕いてわかりやすくお伝えすること
を大切にしています。

FP3級をこれから目指す方にとっては「合格者が通った道のり」としての参考に、また「暮らしに役立つお金の基礎知識」としても読んでいただければ嬉しいです。

普通借家契約の「普通」って何?

──なぜ“普通”と呼ぶようになったのか

こんばんは。今日は、不動産やFPの勉強をしていると必ず目にする「普通借家契約」という言葉をテーマにしてみます。
でもちょっと気になりませんか? なぜ“普通”なんて名前がついているのか?


「普通借家契約」とは?

まず基本から。
普通借家契約とは、昔からある一般的な借家契約のこと。

  • 契約期間は 1年以上(1年未満は無効 → 期間の定めなし扱い)
  • 借主が希望すれば 更新可能
  • 貸主は「正当事由」がないと契約を終了できない
  • 書面でも口頭でも成立する

つまり、借主の居住安定を強く守る仕組みです。


そもそも昔は「普通」と呼ばれていなかった

実は2000年以前は「普通借家契約」という言葉は存在しませんでした。
なぜなら、借家契約といえばすべて「更新あり」が当たり前だったから。

借主は更新を希望すれば住み続けられる、これが“普通”の状態。だから、わざわざ名前をつける必要がなかったんです。


「定期借家契約」の登場が転機

2000年に導入された 定期借家契約 がすべてを変えます。

  • 契約期間は自由(1年未満も有効)
  • 更新なし(満了で必ず終了)
  • 書面必須、かつ「更新はない」と事前説明が必要

この新しいタイプが登場したことで、従来型と区別する必要が生まれました。

そこで、「更新あり」の従来型を 普通借家契約 と呼ぶようになったのです。


「普通」という言葉の意味

つまり、“普通”とは「従来型」「更新がある方」という区別のための名前。
もともとは無名の存在だったのに、新しい契約ができたことで「普通」と呼ばれるようになったんですね。



借地借家法の歴史と背景

この法律の歩みを知ると「なぜこうなったのか?」が一気に理解しやすくなります。

  • 1921年(大正):借地法・借家法が制定。借主保護を最優先に、「更新制度」や「正当事由制度」が整えられました。
  • 戦後:深刻な住宅不足。居住の安定を守るため、借主保護はさらに強化。
  • バブル期(1980年代):保護が強すぎて、貸主が「一度貸すと戻ってこない」と敬遠。不動産流通が滞る原因に。
  • 1992年:借地法と借家法を一本化して「借地借家法」が施行。借主保護を維持しつつ、不動産流通の円滑化も意識。
  • 2000年:定期借家契約を導入。貸主が「将来取り壊したい」「自分で住む予定がある」といった事情に対応できるようになりました。

👉 ポイントは、借地借家法は「借主保護」と「不動産流通の円滑化」のバランスをとるために生まれたということ。


借家契約の2つのタイプ

では、実際の借家契約にはどんな種類があるのでしょうか?

普通借家契約(従来型)

  • 契約期間:1年以上(1年未満は無効→期間の定めなし扱い)
  • 更新:借主が希望すれば基本的に更新可能。貸主は「正当事由」がないと終了できません。
  • 契約方法:書面・口頭どちらでも可。
  • 特徴:借主に有利。住み続けられる安心感が強い。

定期借家契約(2000年導入)

  • 契約期間:自由(1年未満でも有効)
  • 更新:なし(期間満了で必ず終了)
  • 契約方法:書面必須。しかも「更新はない」と事前に説明が必要。
  • 特徴:貸主に有利。終了時期をコントロールできる。

「普通借家契約」という呼び名の由来

2000年以前は、借家契約といえば「更新あり」が当たり前。わざわざ区別する必要はありませんでした。
しかし、定期借家契約が生まれたことで、従来型を「普通借家契約」と呼ぶようになったのです。


定期借家契約に「更新」はあるのか?

法律的には、更新は一切なし。普通借家のような「黙示の更新」(住み続ければ自動更新)は存在しません。
ただし、実務では「再契約」という形で続くことがあります。

  • 再契約:期間が終わった後に、貸主と借主が合意すれば新しい契約を結び直す。これは「更新」ではなく「再契約」。
  • 慣行:関係が良好なら同じ条件で再契約するケースも多く、結果として「更新されたように見える」こともあります。

👉 試験での答えは、「更新はできない。ただし再契約は可能」。


試験対策のまとめフレーズ

  • 大正:借地法・借家法 → 借主保護が強い
  • 戦後:住宅不足 → 借主保護維持
  • バブル期:貸したくない → 不動産流通阻害
  • 1992年:借地借家法制定 → 借主保護+流通円滑化
  • 2000年:定期借家契約導入 → 貸主の安心感も確保
  • 普通借家契約=更新あり、借主有利
  • 定期借家契約=更新なし、書面必須、貸主有利

おわりに

借主を守るために始まった制度が、行きすぎて貸主を縛りすぎてしまった――そこから「不動産流通の円滑化」との調和が模索されたのが、借地借家法の歴史です。
試験の暗記対策だけでなく、不動産を借りる・貸す場面でも役立つ知識なので、ぜひ覚えておいてくださいね。

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